【書籍・紹介】「憲法という希望」(木村草太・著)の読み方

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たくお

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どーも、たくお、です。就労移行支援事業所を経て外資系総合人材会社に就職しました。音楽は、ユニコーンと奥田民生、スピッツ。食べ物は、ラーメン・つけ麺が好きです。チーズが食べられません。2019年6月から禁酒中です。

どーも、憲法に関する書籍を読むことが好きな、たくお、です。

みなさんの憲法のイメージってどのようなものですか。

「なんか、古い」「堅苦しい」「日常生活とは無関係」などなど、さまざまなイメージをお持ちでしょう。

本書を読めば、これらのイメージが少なからず変わると思います。

ぜひ、手にとってお読みいただけたらと思います。また、本書を読み進める上で法律の必要な条文は引用されていますので、ご安心ください。

憲法は、国家の失敗を防ぐための法律だ

本書のタイトルは「憲法という希望」です。

「憲法」と「希望」というキーワードで著者の木村草太・首都大学東京教授(憲法学)がみなさんにお伝えしようとしていることは、先が見えない「息苦しさ」が少なからず存在する中で、どうしたら「息苦しさ」の原因を突き止めて払拭できるか

と問いかけ、それは、学問に触れることだろうと強調します。

木村草太教授の専門は憲法学ですから、憲法を本書で取り上げるのは言うまでもありません。

「憲法は、国家の失敗を防ぐための法律だ」

「息苦しさ」が蔓延しているなら、国家が何らかの失敗をしている。その解決の道筋は、憲法に示されている可能性が高い。今こそ、憲法に託された先人たちの知恵に学ぶべきだろう。

と、本書の「はじめに」で述べています。

本書に触れるまで、私には「息苦しさ」の原因が国家の失敗である可能性が高いという視点はありませんでした。

「本当に国家の失敗と言えるのか?」という疑問を持つ人もいらっしゃるでしょう。でも、本書を読めば、完全なまでにスッキリするとまではならなくても、「息苦しさ」の原因の端緒に触れることができると思います。

これが、私が本書を読み終えた感想です。

前置きが長くなりました。では、本書の中身に入っていきましょう。

第1章:日本国憲法と立憲主義

最近は、「立憲主義」という言葉もだいぶ浸透してきました。

立憲民主党という政党もできましたから身近に感じられる人もいるでしょう。

でも立憲主義という言葉の理解の仕方については、様々です。

本書では立憲主義について

ごく簡単に言えば、過去に権力側がしでかした失敗を憲法で禁止することによって、過去の過ちを繰り返さないようにしよう、という原理のこと

と理解します。

日本は第2次世界大戦で中国や韓国などを侵略しました。

国内では、国民は天皇の臣民として位置付けられ主権がなく、人権が抑圧されたという過去があります。

これらの反省の上に立って、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重が憲法の3大原則として打ち立てられました。

過去の失敗を憲法で禁止するというのは日本国憲法も例外ではありません

憲法の最高法規性

憲法と法律の違いは、どこにあるのでしょうか。

憲法を守るのは国家権力です。これに対して、法律は国民が守るもの、という違いがあります。ですから、先に引用した「憲法で禁止する」というのは国家権力に対して向けられているということになります。

また、憲法は「最高法規」ですべての法律の上位にあるということも大事です。

憲法98条と99条にその根拠を見出すことができます。が、この2つの条文からでは、「なぜ日本国憲法が日本の最高法規なのかはわかりません」(木村草太教授)。

そこで、登場するのが憲法97条です。

「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」である大切な人権を保障する法だからこそ、最高法規であり、公務員はそれを最高法規として尊重・擁護しなければならない、と宣言しているわけです。

と、憲法が最高法規である理由を示しています。

この後、「国民主権と天皇制」へと話題が移り、憲法第1章「天皇」について条文を元に詳しい検討を行います。

すると「憲法第1章は『天皇』という章題ではありますが、その実質的内容は『国民主権』の原理を示していると言えます」

との結論に至ります。この展開に私は2重の意味で驚きました。

1つは、これまで「天皇」の章については「天皇」についてのみ規定されているから重要ではないと思っていたこと。これが、「国民主権の原理を示している」というのは理解の仕方が全く違っていたのではないかと。2つ目は、議論の展開の仕方、です。

その後、

人権保障について触れながら話は進みます。

私が大事だなと思ったのは第1章の最後。国家批判は具体的にです。

ここでの想定は、憲法の学習会を想定しており、学習会では立憲主義を学んでいます。

で学習会では、「立憲主義とは、憲法によって国家を縛るものだ」という抽象的な説明がされる。そして、今の政府は立憲主義に反していてけしからん、とこれまた抽象的な批判がされることがある。

しかし、抽象的に批判されても何を言われているのか分からなく感じる面があると、木村草太教授は「学習会あるある」を取り上げます。

確かに、「立憲主義」という文言が強調されるあまり、政府のどこが間違っているのか、立憲主義に反しているのか、という具体的な検討がされていない現状は否定できません。

政府は政府なりに「ちゃんと」しようとしているわけだから、政府を批判する側がもっと具体的に示すことが大事だと強調しているんですよね。

私も、政府を批判するときは、条文を示して「国家が失敗」を繰り返さないように具体的に指摘したいと、改めて感じました。

第2章:人権条項を活かす〜「家族と憲法」を出発点として

この章では「家族と憲法」というテーマから話が始まります。

なぜ、「人権条項」のスタートが家族と憲法なのか

それは、現在の日本では、「家族と憲法」がテーマになることが多くなっているから。「えっ!そうなの」という人もいるかもしれません。

ニュースで、同性婚や、離婚した女性が再婚できるまでのいわゆる待婚期間制度(たいこん)について知っているという人がいるかもしれません。

待婚期間制度は2015年12月、最高裁で違憲だと判断されて、2016年3月に国会で審議しようと閣議決定されました。同性婚と待婚期間制度、この2つは、世界の流れと比較すると日本は遅れている分野です。

現在の日本では、不合理と思っていても立法が追いつかない状況ですので、なんとかしようと思ったら裁判に訴えるしかないという現状です。

本書ではさらに、世界の流れと比較して遅れている象徴として「婚外子の相続分差別」(最高裁で、2013年に「差別に当たる」との判断)、「夫婦別姓訴訟」について詳しく述べられています。

前者は憲法14条、後者は憲法13条を参照しながら、論点とともに後者については「主張の仕方の問題」点(原告の主張)についても木村草太教授の考えを明らかにしています。

第3章:「地方自治」は誰のものか〜辺野古基地問題の核心と木村理論

第2章までは、「人権論」についての考察でした。

第3章は、憲法学のもう1つの柱である「統治機構論」についてで、沖縄県の辺野古基地建設をめぐる問題を素材に考えます。

辺野古基地建設問題では最近、沖縄県で県民投票が行われたこともあり、ニュースで流れていましたから知らない人はいないと思います。

そして何より、沖縄県には米軍基地がたくさんありますからね。木村草太教授は、沖縄がこうした事態を引き受けていることについて

「これは沖縄差別ではないか」という声が沖縄から、あるいは、沖縄以外の国民から上がるのも当然でしょう。

と基地建設反対の声が上がることを当然とみています。

しかし、政府は聞く耳を持ちません。実際に、辺野古基地建設は県民投票の結果や国政選挙で基地反対派が勝っても「粛々と」基地建設を進めています。

では、「粛々と」基地建設を進めるには、十分な手続きが整っているのか。この検証と法的根拠の検討から本題に入っていきます。

「法的に見たとき、国家の意思決定として示されたのは、2つの閣議決定だけ」です。

1つ目は、小泉純一郎内閣での閣議決定(2006年5月30日)で、「普天間飛行場のキャンプ・シュワブへの移設」が明記されたこと。

2つ目は、鳩山由紀夫内閣の閣議決定(2010年5月28日)。鳩山内閣は、改めて県外移設を検討しましたが実現しませんでした。

閣議決定として2つの内閣が意思決定していますが、この2つだけ。これ以外に国会などで辺野古に基地建設をすると決めたことはありません。しかも、この2つの閣議決定を経たことで適切な手続きと言えるのか

「統治機構論」として問題があるのではないかという疑問が生じてくると、木村草太教授は指摘します。

沖縄の基地問題を解決することは、沖縄県だけの問題ではありません。日本国民が知恵を出し合って、解決の方向をともに考えることが必要です。

木村草太教授は、「木村理論」と名付けた解決方法を提唱しています。

ここでは、ザッとですが、「木村理論」を見ることにしましょう。

「木村理論」で登場するのは憲法41条、92条、95条の3つです。

①憲法41条「立法」

この条文は、「国会が唯一の立法機関である」と規定しています。

私も含めてみなさんも中学や高校で学んだことがあるのではないでしょうか。「そんなの知ってるよ」と思うかもしれません。

しかし、木村草太教授は、大学の「法学部では、この条文を細かく考えていかなければなりません」と述べた上で、憲法41条の条文を元に検討します。

検討の結果として、「国会が唯一の立法機関です」というより「国政の重要事項については、国会が法律で定めなければなりません」との説明の方が具体的にイメージしやすいのではないかと締めくくっています。

②憲法92条「地方自治の本旨」

この条文は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と規定しています。

細かい議論は本書に委ねますが、要するに米軍基地をどこに設置するかは「国政の重要事項」あたる。設置される自治体の自治権をどこまで制限するかは、法律事項と考えるべきではないかと結論づけ。

だとすると、政権与党が多数を占める国会が、政府の望むとおりに法律を作れば「おしまい」ということになる

と述べています。

本当にこれで「おしまい」なのでしょうか。

日本国憲法には、もう一段階、手続きを要求する条文があります。

それが、木村理論の第3の柱である憲法95条です。

③憲法95条「住民の投票」

憲法95条は、特定の地方公共団体だけに適用される法律は、その住民の同意がなければ制定できないとしているのです。

なぜ、このような規定が置かれているのかというと、特定の地方公共団体が差別的な扱いを受けることがないように、憲法は住民投票を要求したということです。

新たに米軍基地を設置するなら、憲法41条、92条に基づいて法律を制定しなければなりません。さらに憲法95条の規定から、地元住民による住民投票も必要となります。

辺野古は沖縄県名護市にありますから当然、名護市の住民投票は必要、さらに沖縄県の住民投票も必要になるのではないかと指摘します。

「木村理論」提唱の後、国会で木村理論に沿った形で国会で質疑がされ、その議事録が掲載(抜粋)されています。

そして、締めくくりとして

私たちの願いは、人間が人間らしく生きたいということであり、そのために憲法が存在しています。しかし、権力者に憲法を守らせるのは簡単ではありません

でも、権力者に憲法を守るように、時には声を上げて求めていかなければいけません。そうでないと、裁判所も、内閣法制局(憲法チェックをする部局)も、権力者の側に引き寄せられていってしまうと、木村草太教授は警鐘を鳴らします。

憲法は「より良い社会にしたい」という国民1人ひとりの希望から形作られるものです。そうした希望を実現するために、憲法をより身近なものと感じて、憲法に関心を持ち、1人ひとりが憲法を「使いこなす」という想いを持っていただけたらと思います。

こう述べて本書の締めくくりの言葉としています。

まとめ

実は本書は第4章がありまして、木村草太教授とニュースキャスターの国谷裕子さんの対談が掲載されています。

タイトルは「対談 『憲法を使いこなす』には」です。

およそ60ページですから本書(220ページ)の多くが対談にあてられています。私が紹介しなかったのは、決して軽く見ているわけではありません。

むしろ、対談を読まれた後に、本書の第1章〜第3章までを読んでいただくと理解が進むかもしれません。

私も「憲法を使いこな」せるように、学ぶことと、権力者が間違いを起こしているのであれば「具体的にどこが間違っているのか」声を上げて指摘するよう心がけたと思っています。

たくお

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どーも、たくお、です。就労移行支援事業所を経て外資系総合人材会社に就職しました。音楽は、ユニコーンと奥田民生、スピッツ。食べ物は、ラーメン・つけ麺が好きです。チーズが食べられません。2019年6月から禁酒中です。

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